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日本一高い石垣を仰いで
遠目からも映える、草原に浮かぶ高層建築『丸亀城』
「丸亀城(まるがめじょう)」は香川県の丸亀市にある平山城で、市のランドマーク的な存在です。堀に囲まれた丸亀城の広大な敷地は「亀山公園」として一般に無料で開放されており、休日には多くの市民の憩いの場と化しています。この一帯は見事なまでの平野であり、広々とした草原、グラウンドが形成する開けた空間を有し、人々は球技などに興じています。一方で、この丸亀城は日本一高い石垣を持つことで有名です。いくつか他の城を巡ったあとでこの丸亀城を目にすると、そのあまりのスケールに圧倒され、しばらく言葉を失ってしまうかもしれません。その衝撃的なまでの景観の理由はもちろんその石垣の巨大さ、高さにあります。それはもはや小さな山の様相を呈しており、平山城でありながら丸亀城の天守にたどり着くためには登山をしなければなりません。そしてもう一つ、この景観に重要な役割を果たしている要因が、丸亀城が平山城であるという点です。
「平山城(ひらやまじょう)」とは平地にある城のことです。城郭とは基本的に高台に建築したほうが防衛上有利であるため、可能な限りは標高の高さで立地を決める向きがあります。しかし一方では都市の中心的施設という性格も有さなければならないため、都市の発展する平地に築かれる場合も珍しくはありません。丸亀城はかつての丸亀市を城下に持つべく建築された都市型の平山城です。この一帯は特に平坦な平地が続くため、丸亀城の石垣の高さ、そしてその頂上に建つ天守閣が一層映え、丸亀市のほとんどの場所からその雄姿を拝むことができてしまいます。
丸亀城の石垣と天守
丸亀城の観光は極めて味わい深い、時間のかかる散策になるといえるでしょう。丸亀城の堀の内側――亀山公園は多くの場所がグラウンドや草原、または過去には小児用の小規模な遊園地や動物園として活用されていたエリアもありますが、総じて平坦であり、豊富な植樹が織りなす緑豊かな景観こそありながらも、城郭の気配は希薄です。しかし中心の本丸に近づくにつれ途端に歴史ある城郭内建造物が目立つようになり、地面も芝生から、上品な灰色の小石で敷き詰められた砂利道へと変わってゆきます。まもなく立派な塀に突き当たり、見上げるほどの門を潜り抜けて、そこからが長い道のりとなります。丸亀城の石垣はその高さも注目されますが、加えて大きい――つまり、非常に広範囲に高い石垣が設けられており、観光の際にも本丸のある中央へたどり着くためには縫うように進まなくてはなりません。天守の土台となる最も高い石垣以外の、周囲を取り囲む石垣も平均以上の規模であり、見ごたえは十分です。
城門をくぐってから天守にたどり着くには、最短距離でも十五分はかかるものと思っていいでしょう。もちろん観光で訪れるのですから、最短距離を歩くことも速足で先を急ぐこともないでしょう。小一時間の時間をかけて巡るとしても十分な規模の建築量がその中には秘められています。――しかし他方で、丸亀城の天守はその石垣の規模に比さずとも小ぶりな部類です。「現存12天守」に含まれる有名な天守ではありますが、その大きさは日本一小さく、この石垣の規模とのアンバランスさが丸亀城の景観の特徴であり、またかつての優れた戦略をうかがわせる要素なのです。小さな天守が高い石垣の先端に座すことで、遠近法により石垣は通常よりもずっと高く感じられます。加えてこの石垣は「扇の勾配」という独特の工法により設計されています。ふもとから上に行けば行くほど垂直に切り立つ曲面を成しており、頑丈さを備えながらも敵の侵入を阻む、非常に優れた工夫でした。
丸亀城にまつわる逸話と遺構
丸亀城の石垣のスケールは、その雄姿を見ただけで息をのむでしょう。しかし次の瞬間にはこうも頭をよぎるはずです。――当時の人々はこれを作るのに凄まじい苦労を費やしただろう、と。実際に丸亀城の石垣の工事は大変な大事業であり、難航しました。今では『国の史跡』に指定され、多くの観光客を呼び寄せる日本一の石垣は、もう400年近く前に築かれたものなのです。高さ60メートルという、当時としては計画段階から絵空事のように思われた石垣工事には、いくつかの逸話が付随しています。中でも、人柱伝説は全国の大規模な石垣の多くにまとわりつく怪談です。全国の多くの地域で聞かれるわりにまったく代わり映えのしない内容で、石垣工事が難航した際に、人間を土地の神に捧げるべく石垣に埋める、という物語です。その物語はもはや石垣観光の様式美とでも言うべきもので、それぞれの石垣の人柱物語を聞き比べるのも、「城めぐり」の醍醐味と捉えてしまいましょう。
丸亀城の石垣には近所の豆腐屋が使われました。適当にさらってきた豆腐屋を雨の日に無理やりに生き埋めにしたため、以来雨が降ると丸亀城の石垣からは「とーふー、とーふー」という豆腐売りの声が聞こえるというのです。なんとも、とても逸話とは呼べないレベルではありますが、こういった話は城めぐりにはつきものとなっています。また、これはもう少し信憑性のある話で、当時の城主が石垣の完成を喜んだ際、水を差した男の話です。自分ならこの石垣を登れると申し出た男が実際に城主の目の前で登りつめてみせたため、城主はその男が敵と内通するのを恐れて井戸に埋めてしまいました。興味があるようでしたら、このような歴史小話の足跡を追って、ゆかりの地や資料館などもめぐってみると、より当時の時代背景や土地の様子への想像力が高まることでしょう。
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