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最後のコウノトリが生きる豊岡の地
コウノトリと関わりの強い城崎温泉の伝承
「城崎温泉(きのさきおんせん)」は豊岡市のシンボルバードであり、現在日本で豊岡市でしか見られないというコウノトリに関わる伝承を持つ温泉です。城崎温泉はおよそ1300年の古い歴史を持ち、江戸時代から有名な温泉街として栄えてきました。そんな温泉の開湯にまつわる伝承にまでコウノトリが出てくるのですから、いかにこの地が長いあいだ彼らの住処となってきたのかをうかがえ、こんにちの個体数減少の状況を気の毒に思わずにはいられません。コウノトリは現在『国の特別天然記念物』に指定されており、国内でも人口の繁殖に注力されていますが、なかなか上手く行っておらず、コウノトリが世界的な『絶滅危惧種』であるという状況は好転していません。コウノトリは全長1メートルを超える非常に大型の水鳥で、姿はツルに似ており、しばしば混同されます。
城崎温泉に伝わる伝承によると、城崎温泉が発見された際、コウノトリがその湯に浸かって傷を癒していたといいます。ただしこの類いの「発見の折に動物が湯の中で傷を癒していた」という伝承の存在は、この城崎温泉に限ったことではありません。それどころか、全国の名のある温泉のそのほとんどに動物と発見者を変えただけの全く同じ物語が、まるでセット販売のように寄り添っています。これらの物語は湯治が大流行した時期に各地の温泉地が競って客寄せに考案したものと思われますが、近しい内容の記録が見つかることも多く、まったくの作り話というわけでもないようです。いずれにしても、このような温泉開湯にまつわる伝承は、ひとつの重要な情報を明示しています。当時その地の人々にとって最も馴染み深い、マスコットキャラクターともいえる動物は何であったのか、それがはっきりとわかる貴重な歴史資料なのです
城崎温泉のめぐり方
「城崎温泉(きのさきおんせん)」とコウノトリの関係性については、その温泉開湯にまつわる伝承の登場動物として採用されていた、ということでした。城崎温泉にはその伝承に出てくる「コウノトリが傷を癒していた湯」にちなんだ「鴻(こう)の湯」という外湯(そとゆ)があり、名所となっています。伝承ともおとぎ話ともつかないこのような開湯の謂れには、あるいはあまり興味を持てないという人もいらっしゃるでしょう。しかし、そのような人にとってもこの「鴻の湯」を始めとした城崎温泉の外湯の魅力はゆるぎないものであるはずです。その城崎温泉本来の魅力に迫っていきましょう。
城崎温泉は基本的に外湯巡りが主となる温泉街です。外湯とは宿泊施設を伴わない日帰り温泉――つまりは銭湯の形式の入浴施設のことです。一言で温泉街といっても、大きく2種類に分かれています。入浴施設と宿泊施設がセットになった、いわゆる温泉宿が軒を連ねている街と、いくつもの外湯が地域に密集し、その地域内の宿の中には基本的に温泉を設けてない街です。城崎温泉は外湯型の温泉街であり、その代表的な七つの外湯を指して「七湯」と呼んでいます。
城崎温泉といえば外湯七湯巡りと言い習わされますが、城崎温泉は私たちの七湯巡りを街を挙げてバックアップしてくれ、より楽しい思い出になるようにと工夫が設けられています。たとえば、七湯の外湯では「一番札」というものをお客さんに配っています。これはその日の一番風呂に入ったお客さんだけがもらえるという、いわゆる限定グッズ的な楽しさを味わえるよう考案されたものです。また、城崎温泉では浴衣が正装とされており、温泉街の景観を服装から重んじています。その一帯に足を踏み入れると、道行く人は皆浴衣を着ています。きっと身も心も温泉にひたれることでしょう。
イルカショーにダイビング体験、城崎マリンワールドの多彩な魅力
「城崎(きのさき)マリンワールド」は豊岡市の日和山(ひよりやま)海岸に面した開放的な立地の水族館です。観光で訪れるならば日和山海岸そのものが優れた景勝地であり、リアス式海岸特有の起伏に富んだ地形を楽しむことができるでしょう。そしてこの城崎マリンワールドはただの水族館ではありません。水族館というよりは複合レジャー施設と呼んだほうが相応しいかもしれません。イルカやアシカのショーが特に有名であり、青空の下、広い客席が設けられた水槽で繰り広げられるダイナミックなショーは開幕から終幕まで、始終お客さんの歓声が途切れません。しかし、多くの「マリンワールド」と名の付く施設はここで終わってしまうところです。水族館とアシカショー、この二つが揃っていればそれがおおむね「マリンワールド」であり、それ以上を望む人もいません。城崎マリンワールドは、さらにそこから一歩踏み出した世界を私たちに見せてくれようとしています。
城崎マリンワールド有するアトラクションの中でも最もユニークなものが、「ダイブアドベンチャ-」という、服を着たまま、海に潜ることなくダイビングの疑似体験ができるという、非常に大掛かりな体験型展示物です。360度の巨大なスクリーンに囲まれた部屋に複数人で入り、非常に再現度の高い海中の映像を閲覧できます。波が生み出す気泡の流れまで忠実に再現された高解像の映像は、ほとんどすぐ目の前で起こっていることのように、実際に自分が海に潜って、その波が顔面にぶつかってくるかのように感じることができます。映像を見ているあいだ、足場は移動し、ゆっくりと沈んでいきます。その先には、さらに見たこともない光景が広がっているといいます。――しかしそれは、実際に訪れてみた人だけが知り得るとっておきですね。
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