鳥取県の漁港から全国の食卓へ

鳥取県の漁港から全国の食卓へ

鳥取といえば、身がいっぱいに詰まった松葉ガニ!

「松葉ガニ」といえば言わずと知れたズワイガニの高級ブランドです。「松葉ガニ」という蟹そのものが、もはやズワイガニのブランドというよりも固有名詞のようになっている昨今、「松葉ガニ」という名はを知っていても、それがズワイガニかタラバガニかと聞かれると答えられない人が相当数いるくらいなのです。今や知らぬ人のないこの「松葉ガニ」は兵庫県と京都の日本海、そして鳥取県で獲れたズワイガニのみに名づけられる名前です。またズワイガニの中でも松葉ガニと呼ばれるのは雄のカニのみであり、その条件が松葉ガニを一層希少なカニ、高級なカニたらしめていると言えるでしょう。ズワイガニ漁は解禁日が毎年11月6日と定められており、翌年の3月20日で終了となります。冷凍保存されたカニは一年中食すことができますが、新鮮でおいしい松葉ガニを望む人々は皆、毎年解禁日を心待ちにしています。

ひとえに松葉ガニといっても、その中でもさらに水揚げされる漁港によって名前が異なっていたり、ブランドの価値に差異が生じるようです。そして鳥取県内でも松葉ガニの水揚げが特に盛んな綱代の松葉ガニこそ、日本で最も名高い松葉ガニといっても過言ではないでしょう。少なくとも200年前には日本史の記録にはっきりと表れる綱代の松葉ガニは、かつて鳥取藩主に献上されて大変喜ばれたといいます。その綱代の松葉ガニの売りは何といっても鮮度です。漁場が近いために日帰りで漁を終えることができるため、獲ったその日に街の料亭で振る舞われることさえ鳥取県では普通のことなのです。

鳥取の夏は白いかの刺身が食卓を飾る

鳥取県の代表的な海の幸の一つである「白いか」は、全国的には「ケンサキイカ」と呼ばれるいかです。鳥取沖合では夏、7月から8月にかけて白いか漁の最盛期となります。夏の夜、沖合でたゆたう白いか漁船のまばゆい明りは幻想的で、地元の人にとっては見慣れた夏の風物詩です。近年この白いかの漁獲高は減ってきており、元々高級品とされてきた「白いか」はますます希少価値が高まっています。

日本で水揚げされる魚介類の中で、『いか』は第一位の漁獲高を誇る非常にメジャーな海の幸です。しかしながら、全国各地で水揚げされるメジャーな魚介だからこそ、一部の高品位な以下のブランド価値は大変高いものとなっています。鳥取の「白いか」といえばそんなブランドいかの中でも名のある一角であり、その群を抜く甘みや張り合いのある食感は、特に生食――寿司だねとして全国の寿司職人から絶大な支持を受けています。いかの大トロと称される絶妙な口どけは、初めて食べる人のいかの概念を覆すでしょう。刺身として生姜醤油でいただくのが最もよく食べられる食べ方ですが、白いかは調理しても簡単に甘みなどの持ち味が薄れないことから、焼いても煮てもおいしく味わえるとされています。そしてもちろん、白いかを食べるなら地元で新鮮なものを一度口にしてみたいものです。全国的に食べられているいかのほとんどは、冷凍保存してあるものを解凍して提供されています。朝獲れのいかを味わえる機会は、そうそうあるものではありません。白いかの漁場を近海に持つ鳥取県ならではの貴重な体験となるでしょう。

鳥取の春の楽しみ、幻のモサエビとは

「モサエビ」はだいたい秋から春にかけて日本海の沖合で獲れるエビです。全国的にはあまり知られていないエビで、正式名称「クロザコエビ」ですが、やはりその名前も、聞いたことのある人は少ないのではないでしょうか。地元では「モサエビ」のほかに、「ドロエビ」という、あまり名誉でない呼び名もついています。そしてこの名前の理由こそが、このエビが他県に出回らず、知名度の伸びない理由なのです。モサエビは鮮度が落ちるのが非常に早いため、水揚げしてしばらく経つと黒ずんでしまいます。そこからドロエビという異名が与えられ、地元でしか味わえない幻のエビとなってゆきました。

ドロエビとも呼ばれるこの鮮度が落ちやすいデリケートなモサエビは、しかし新鮮なものは極めて優れた味わいを持っています。鮮度が落ちやすいということが意味するのは、ひとつにはその栄養価の高さといっていいでしょう。世に栄養価の高いものほど腐りやすく、味の淡白なものほど長持ちすることを思い返してみてください。鮮度が落ちやすいということは、死んだ生物の体内で微生物による分解が起こりやすいことを意味します。微生物にとっての栄養が豊富な生物ほど腐りやすいのです。

モサエビの甘みは非常に濃厚で、またその食感は驚くほどしっかりとしており、噛めばプリプリと口内ではじけます。新鮮なままいただける幸運な機会に恵まれたならば、断然生食がおすすめです。そしてそれを可能にするためには、春の鳥取を訪れるのが一番でしょう。秋から春にかけて食べることのできるモサエビですが、春のモサエビは卵を抱えているため、もっとも美味であるとされています。

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