季節折々の奈良の祭事を楽しむためには

季節折々の奈良の祭事を楽しむためには

氷の神様を祀る、氷室神社の献氷祭

奈良市にある「氷室神社(ひむろじんじゃ)」は、毎年春に行われる変わったまつりで有名な神社です。「献氷祭」というそのまつりはその名のとおり、氷室神社が祀る氷の神様に氷を献上するためのまつりです。各地の氷に関わる商いを生業にする人々が集い、大変賑やかに開催されます。製氷業者や、氷を販売する業者、冷凍、低温物流の業種や団体、またかき氷を製品とする街の菓子屋などが一斉に集まり、その年の業績成就を祈願するのです。少なくとも奈良時代から行われてきたこの行事は今では毎年の恒例となり、業者のほかにも多くの見物人で賑わっています。

まつりの当日には氷室神社の境内は至る所に配置された大きな氷塊、氷柱で非常に涼しげな装いとなります。また見物人には出店から無料でかき氷などの氷を用いた出し物がふるまわれるため、地元の人も祭り気分で駆けつけます。しかし製氷業者など正式な参列者にとっては業績を祈願する厳かな場でもあり、儀式はあくまで古くからの恒例にのっとって厳格に進行します。祭祀によってしゅくしゅくと祈祷の時間が設けられ、舞楽殿と呼ばれる舞台の上では神楽が舞われます。続いて過去に氷に関わる業種で命を落とした人々を悼む慰霊祭があり、また功労者へ感謝状贈呈があります。神前には「鯉の滝のぼり」と呼ばれる、氷の柱の中に花を込めた見事な作品が奉納され、巫女の米が披露されます。

全国でも類を見ない氷に重点を置いた「献氷祭」は氷室神社でしか見られない上、その規模は大々的なものです。ただ軽く立ち寄るだけでも無料でかき氷が食べられる、という紹介の仕方はやや礼を欠きますが、奈良を訪れる際に時期が重なれば、列席してみてはいかがでしょうか。

率川神社のゆりまつり

「率川神社(いさがわじんじゃ)」の「ゆりまつり」は春の奈良における名物祭事となっています。文武(もんむ)天皇の時代、8世紀ごろからおこなわれてきた由緒正しい神事であり、非常に古い形式を変容させることなく今に伝わる貴重な祭事の一つです。率川神社の祭神である「五十鈴命(いすずひめのみこと)」にゆかりのあるササユリの花で酒樽を飾り、神前に奉納することから、「三枝祭(さいくさのまつり)」とも言われています。大勢の巫女がササユリの花を手にして神楽を舞う姿は見物であり、午後からは古い様式の装束に身を包んだ少女たちが街中を歩いて回ります。朝から夕までかけて盛大に、そして厳かに行われる祭事です。

「ゆりまつり」は文武天皇の時代すでに国の重要な祭事として国家に規定されていた記録が残っています。ゆりまつりは当時国中に恐れられた疫病を鎮めるための祭事であったため、そのように重要視されたのだと思われます。また、この率川神社が全国的に重んじられる理由の最たるものが、その祭神にあります。率川神社の祭神である五十鈴命は初代神武天皇の皇后なのです。天皇を神と崇める神社は少なくありませんが、皇后を祭神に奉る神社は非常に珍しいと言えます。五十鈴命は古くから「子守明神」とたたえられており、安産や育児、家庭円満の神として信仰を集めてきました。当時その威光はこの地で特に知れ渡り、優れたものであったようです。疫病を鎮める力があると信じられるようになったのも、その類い稀な民衆の支持あってこそなのでしょう。

奈良といえば鹿、鹿といえば鹿寄せ!

「鹿寄せ」は毎年二月から三月にかけて毎朝行われる奈良の冬を飾る風物詩です。その光景は思わず笑みが漏れてしまうほどほほえましくのどかで、またほかのどこでも見られないでしょう。場所は春日大社参道の南側、「飛火野(とぶひの)」と呼ばれる広大な緑地です。期間中、毎朝10時から15分間、ここで係の者がナチュラルホルンを高らかに吹き鳴らします。そうすると、森の中から続々と鹿が集まってくるのです。まったく不思議な光景なのですが、ホルンの音を聞くことで森中の鹿が一斉に走り出てくるその異様は圧巻であると同時に愛らしく、見物に訪れる人たちのあいだからは思わず妙な笑みがこぼれます。期間中は毎日同じ時間にこの貴重な景色が見られるため、奈良公園の午前中の散歩を日課としている地元のご老人を中心に親しまれています。

ホルンで吹かれる音色はいまいちメロディに欠ける、間延びしたような、特に意味のない音にも聞こえます。しかしこれはどうやらベートーベンの交響曲第6番、田園の中の一部であるそうです。鹿が集まりきると、その笛を吹いた係の者がどんぐりをばらまきます。鹿たちはそれを目当てに集まってくるのですね。ベートーベンの笛の音が聞こえたらどんぐりが手に入ることを学習しているのです。しかし、今となってはその行動が身についている鹿たちですが、最初にナチュラルホルンを吹いた人の奇行が気になるところではあります。このイベントの参加はもちろん無料で自由に見物することができますが、期間中は毎日係の者から鹿せんべいが販売されています。どんぐりをむさぼる鹿たちは食欲旺盛で、まだまだ食べきれないとばかりに鹿せんべいに群がってきます。鹿たちと存分に触れ合えるチャンスですので、鹿せんべいを購入し、自分の手で鹿せんべいを食べさせてみましょう。普段は警戒心の強い鹿たちも、鹿せんべいを差し出されると地面に散らばっているどんぐりには目もくれずに近寄ってきます。

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